9時少し前、園に到着すると、自転車に乗せられた子供、母親に手を引かれた子供が続々と登園している。お母さん方は、スーツをはじめ、わりとキッチリした服装だった。子供を先生に託すと、慌しく去って行く。
働く方の貴重な通勤時間を邪魔しては悪いと思い、登園の嵐が過ぎるまで、隅っこで皆さんの様子を見ていた。一段落したところで、ムスメをお願いした。
ムスメは振り返ることもなく、教室にいる子供達の中に混じり、同化してしまった。先生にも「何だか、慣らしをするまでもなかったわねぇ。まあ、規則なので…」と言われるほどだった。
少し早めにお迎えに行き、園内をこっそり覗いてみた。同じ年くらいの女の子とままごとをしていた。最近、公園にいた見知らぬ子供達にままごとを教わり、気に入っている。「お代わりあるからね。」と、私のいつもの台詞を真似ているムスメ。
問題なさそうなので、園内に入り、先生に声をかける。ムスメが「帰りたくない」と、ごねるかと思いきや、先生に呼ばれるとあっさりと友達に別れを告げ、私の元へやってきた。
先生から「何も問題ないし、これ以上、慣らしをする意味もなさそうなので、明日からフルにしませんか。」と提案された。焦る必要はないが、給食もあるし、ムスメも楽しいと言っているので、お願いすることにした。
働いてもいないのに、9時半〜3時半まで預けることになっている。アメリカでのプリスクールも6時間だったという理由で、保育時間を6時間に設定した。
実家の両親は、普通の幼稚園と同様に半日くらいと思っていたらしく「そんなに長時間通わせてどうするんだ?」とか「何で、そんなに長いんだ?」と驚かれた。
「あなたが4歳になった時、やっと幼稚園に通ってくれたの。でも兄弟がいたし、いっつも育児に追われていたわ。あなたは、育児に追われている期間が短いわねぇ。」と、母からは半ば苦労話の押し付けをされたが、それも人生、時代の違いということで丸め込んでおいた。
ムスメと一日中向き合って暮らしたのは1年半くらいである。今後、向き合う時間は少なくなる一方だろう。第二子の予定もないし、早くも暇な主婦になりそうだ。
ほんの数年前まで、自由にならない我が身を呪い、こんな風に時間を持て余す時が来るとも考えられなかった。
苦悩の渦中にいる時は、それが長く感じるものだが、意外にも呆気なく終わり、過ぎてしまえば、大したことない事が多い。
そう考えると、悩む時間はバカバカしい、と分かりつつも悩むのが人間の性なんだよなぁ。